会社に入社して2年目くらいのときに、トヨタMR2のG-Limited Tバールーフを買った。
色は赤。
色については、好みの分かれるところだが、自分のスポーツカーのイメージは赤だった。
山口百恵が歌っていたのが、真っ赤なポルシェだったからでもない。
幼少の頃、親の友達のおばさんに百貨店のおもちゃ売り場で買ってもらったブーブーが赤いジャガーEタイプだったからかも知れない。
MR2はリトラクタブルだから、フロントライト形式は異なるが、左右の感じは似てなくもない。フェラーリと言ったら赤という人もいる。

MR2を選んだ理由は、そのスタイリングが大きな理由の1つ。
フェラーリをデザインしたピニンファリーナが、MR2(SW20:エンジン型式)をデザインしたと言われている。
MR2のサイドの流れるようなラインは、フェラーリのテスタロッサを想起させる。
ミッドシップのエンジンが収まっている、ドライバーズシート後方にかけての外のピラーからリアエンドにかけてのラインと、リアボンネットのデザインもどことなく、同様にエンジンがリアに置かれているフェラーリと形状が似ているように思うのは私だけではないだろう。
MR2のフロントマスクは、ヘッドライトが収まっているあたりから、サイドミラーに向かい伸びている、丸みを帯びた、どこかボリューミーな感じが、グラマラスな感じで、また、セクシーな感じ好きである。
はじめて夜の街をMR2で流したときに、ヘッドライトが収まっていたボンネット下から出てきたときには、感動した。
季節は秋だったので、上のTバー・ガラスルーフを外して、オープンにし、外の風を頭上からも感じた。とても爽快な感じだった。
サイド・ウィンドウも降ろすと、秋の冷ややかな気持ち良い風が車内に流れ込み、体を包む。
後方のミッドシップエンジンからは、低速ギアで回転数を上げると、心地の良いエンジンサウンドが後方から感じられるのは、ミッドシップエンジンの醍醐味だ。

ドライバーズ・シートは非常にタイトで、コックピットのようだ。
センターコンソールは、ギア変速がし易いように、ドライバーがコンソールにひじをかけながら、シフトチェンジが出来るよう、高めにレイアウトされている。
ただ、移動のために乗るための車ではなく、運転そのものを楽しむために設計された、当時の日本では、スポーツ性能を徹底的に高めるための工夫が到るところに施されている車なのだ。
この車はもちろんオートマチック・トランスミッションの仕様もあった。
だが、それを選ぶのは、もったいない。私は当然マニュアル・トランスミッションを選んだ。
そして、そのシフトフィールに惚れ込んだ。トリプルコーン・シンクロが内臓されていて、シフト・チェンジを繰り返すごとに、そのフィールの小気味良さを体感出来るのだ。

MR2での、峠道の走りは最高だ。だが、コーナリングで、腰で回るような感じがするのは、AW11のMR2の方が強く感じる気がする。
そういった意味では、AW11のコーナリングを友達の車ではじめて体感したときの感動は今でも忘れられない記憶として残っている。
車重の軽量化が徹底して計られているということもあり、加速感も刺激があった。
MR2の前に乗っていたホンダのCR-Xも軽量化が徹底されたスポーツカーで、その走りは最高だったのを今でも覚えている。
MR2は、エンジンが前になくフロント、ライトであるため、コーナーでの回頭性は俊敏かつ、非常に高い。
フロントのボンネットを開けると、スペアタイアが入っているのが目につく。そして、標準で、ストラット・タワーバーが装着されていて、これが、車体剛性と、コーナリング性をより高めることに貢献している。
フロントのトランクは、そのスペアタイヤを置くことでスペースの残りの余裕が殆ど無かったが、私は、ちょっとした洗車用具を入れていた。

キャビンの中は、二人乗りなので、後部座席が無く、薄いカバンが1つ入る位のスペースしか無い。
Tバールーフを外すと、移動先に持っていくことになる場合、席の後ろに置くしかないので、そうすると他のものを運転席・助手席の後ろに置くことはでき無い。
そういった利便性を敢えて捨てることで、スポーツ性を高めているのである。
実用性の優先度は低くし、走りを追求する姿勢は賞賛に値する。中途半端なところを徹底的に削ぎ落とす、この潔さが私は好きだ。
サイド・リア・パネルには、エアー・インテークの穴が空いているが、このデザインも洗練されていて、好きなパーツである。
スポーツ感が高い。後ろのウィンドウは、後部座席が無いので、昼間でも全く見えない透過度のスモークを貼って、プライバシーを確保した。
これがあることで、渋滞中でも心置き無く、隣の彼女とキスをしたり、いちゃいちゃ出来た。

エンジンはノーマル・アスピレーションNA:自然吸気で、ターボなど過給機などは無かったので、ラグ無く低速から加速出来る心地よさがあった。
170馬力は必要かつ十分なパワーだった。
ターボ車のGT, GTSは200馬力を越していて、さらにチューニングをほどこして、さらに馬力をアップしている車も多かった。
当時としては、パワーのある部類である。先輩のトヨタ・スターレツト・ターボが前方を走っていて、私が後方から来ているのに気づいて急加速をした。
かなり速かったのを記憶している。
当時、スターレットは、スポーツ・ドライブを重視する友達に人気があった。足回りを替えて、ラリーに参加している友達もいた。
近所の先輩は、ギャランでラリー仕様にしていたが、私がMR2に乗っているのを見て、ジムカーナをすすめてきたので、興味があったが、その後、やることはなかった。
かといって、峠を攻めに行く走り屋だったわけでもない。すぺてノーマル仕様で乗っていた。ホイールやマフラーを変えることも考えたことがあったが、結局、そのまま乗っていた。
昨日、たまたまケーブルTVでアニメ、頭文字Dの劇場版をやっていた。
86とSW20のいろは坂のバトルシーンを見ていたら、またSW20に乗りたくなった。

リアのエンジン・ルームはかなり狭いスペースにぎっしりと、様々なパーツが詰まっている。
そのため、上から届きにくいパーツの交換の場合、一旦、エンジンまわり一式をボディーから切り離す必要がある。
特にターボ車の場合、ターボパーツがオイル漏れを起こすと、エンジンを車体から切り離して、おろしても、まだ、他のパーツを外していかないと、手が届かない場所にあるので、かなりの重整備になる。
イギリスの車リペア番組で、SW20のターボ車のターボパーツを交換するまでの流れを見ていたが、かなり大変そうだった。
その番組でメカニックは、そのターボパーツを「地獄のパーツ」と呼んでいた。それだけ、大変な作業ということだ。
その場合、時間換算の工賃が高くつくことがあるので、中古の購入を検討している人は、走行距離と整備記録を照らし合わせて、その該当パーツの交換時期に来ていないか確認することが必要だ。
タイヤは前後は、ノーマルとしては珍しくサイズが異なるものだった。
扁平率は、前が55、後ろが50だった。
フロントが前後のタイヤので幅が異なり、前輪が小さかったので、その分フロントがリアよりも車体が下がっていて、それがまたカッコ良かった。
結構運転が荒かったので、タイヤの減りが早く、タイヤが減ってくると、扁平率とタイヤ性能の関係で、わだちが深い国道や高速道路では、ハンドルを取られやすく、よくヒヤヒヤした。
フロント・ライトでエンジンが後ろの場合、雪が降ると、ちょっとしたことで、スリップして、タイヤがロックする。
タイヤがロックするとハンドルが効かなくなるので、危険だ。
一度、高速を走っている途中で雪が降り出し、レーンのラインが見えなくなるほぢ、雪が降り続く中、30キロ以下でノロノロ運転して数十キロ走ったことがあった。
高速運転中は幸いスリップしなかったが、一般道に降りて集中力が切れて、タイヤがロックし、縁石に当たって車が止まったことがあった。
スピードは出ていなかったのでダメージはなかった。
一度、どのくらいスピードが出るか最高速度を試しに高速道路で走ったことがある。
メーターは一応180キロまでついている。
それを超えて、メモリがないところまで数センチスピードを示す針が進んだところで、リミッター(燃料供給カット装置)が働いて加速が止まった。
180キロまでのメモリ幅から換算すると、190キロくらいまで出たようだが、車の挙動が著しく悪くなるようなことは無かった。
車高が低く、空力抵抗を考慮した製作されたボディ形状であることにより、そのくらいのスピードが出ても耐えられたと考えている。
フロントとリアにはスポイラーが標準で装着されている。Optionという車雑誌では、ドイツのチューナー、フィリティンガーが製作されたスポイラーキットが紹介されていて、とてもカッコ良かった。